2007年3月3日付け当ブログ記事
「浜辺の歌」「かなりや」の作曲家・成田為三の驚愕ピアノ曲「君が代変奏曲」「浜辺の歌変奏曲」 で予告した
浜辺の歌変奏曲〜成田為三ピアノ曲全集
(ピアノ・白石光隆)の感想、というよりもさらなる紹介です。感想は「すごい」「面白い」など愚にもつかないことしか書けそうにないので・・・しかし上記の過去記事、さすがに少しコーフンし過ぎですね(汗)。
このCDの収録曲中最も長大で聞きごたえのある曲が、1942年に作曲された「君が代変奏曲」です。タイトル通り、日本国歌「君が代」を主題とする変奏曲です。若い頃に矢野顕子の初期の傑作「
長月・神無月
」に入っているジャズ、フュージョン風アレンジのインスト君が代を聞いたときもかなり驚きましたが、この成田為三の曲は正攻法も正攻法、真正面から君が代をクラシック音楽にしてしまった手腕に感心しました。この曲に絞って少し書いてみます。
まず主題の君が代がごく控えめに出てきます。頭の歌詞「きみがよは」、最後の「こけのむすまで」の部分にも和音が付けられています(君が代の和声についてはこちらが参考になります→
第二の君が代について)。中間部は原曲と少し和声が違いますが、奇を衒わない静かな出だしです。
この後、君が代の旋律が極めてオーソドックスに変奏されていきます。ライナーノートのYM氏による楽曲解説を引用させてもらいます。
〈日本国歌「君が代」を主題としながらも、時局的な戦意高揚の意図の感じられない伝統的なドイツ流変奏曲で、息苦しいまで理づめに書かれている。12の変奏と長大なコーダ全体にわたりオクターブや大きな跳躍が多く、演奏には極めて高度な技巧とエネルギーが要求されるが、外面的な華麗さはない。〉
いかにもドイツのクラシック音楽、という雰囲気の曲ですが、第4変奏の日本的音階、第6変奏の「さくらさくら」を思わせる左手の動きなど、主題が君が代だけに所々で日本情緒が出てきます。そしてコーダの部分・・・また引用します。
〈激しい和音の連打と、「君が代」が和声を伴わない両手のオクターブで厳かに奏されるものが交互に現れた後、アレグロとなり、君が代が分厚い和音の跳躍を伴い、ワルツ調にこってりと処理され〉
和音のない君が代が少し出てきては中断し、がんがんがんがん・・・これの繰り返しで盛り上がっていきます。大迫力です。私はこれを聞いて君が代が前より好きになりました。君が代が好きな人も嫌いな人も、一度ぜひ聞いてもらいたいですね。
他の収録曲もそれぞれ個性的な面白い音楽ばかりです。また戦前のアニメ「くもとちゅうりっぷ」に関する過去記事(→
こちら)で紹介しましたが、このCDの片山杜秀氏のライナーノート「本当は畏るべき成田為三――または、山田耕筰・成田為三vs本居長世・弘田龍太郎・中山晋平という視点から、日本近代音楽史を再考する試み――」も毎度のことながら力作、一読の価値ありです。