くまぞう雑記帳

伊福部昭、芥川也寸志、黛敏郎・・・クラシック系日本人作曲家の音楽を愛好しております。

「手討」「鯨神」@シネ・ヌーヴォ「追悼 田中徳三監督」 

〔2008.04.27〕
先日紹介した シネ・ヌーヴォ「追悼 田中徳三監督」 のうち「手討」と「鯨神」だけ見ることができました。書くのが遅くなりましたが感想を手短に。

手討」(1963)。岡本綺堂の番町皿屋敷(怪談の要素を取り除いた戯曲)が原作。旗本奴と対立するのが原作の幡隨院長兵衞ではなく、加賀前田百万石はじめ有力外様大名になっている。大名の娘と政略結婚させられそうになる白柄組の旗本青山播磨(市川雷蔵)。将来を誓い合った腰元のお菊(藤由紀子)は不安と嫉妬から家宝の皿を思わず割る。粗相ならと許す播磨だが、愛を疑われ故意に割ったと知った播磨はお菊を手討にし、自らも・・・

藤由紀子をスクリーンでは初めて見ました。わりあいバタ臭い顔だけど着物が似合う。美しいなあ〜。田宮二郎と結婚して女優を引退した人ですね。市川雷蔵と並ぶとホント美男美女。播磨に問い詰められたお菊の泣き顔とうなじの線、前田島津伊達の三大名が斜めに並んだカット、ラストの桜など、美しいシーンをいっぱい見られて(悲しい結末だけど)幸せでした。

鯨神」(1962)。こんなに脂ぎった映画を見たのは初めてです。冒頭から伊福部昭の合唱を伴う重厚な音楽が鳴り響き、怪獣映画モード?? 登場人物たちに共感できるところが少ないというか、感情移入できなかったので十分楽しめたわけではないのですが、汗臭さやバイタリティーには圧倒されました。

やっぱり映画はスクリーンで見ないとダメだなあ〜、と当たり前のことを強く感じました。あ〜田中徳三特集もっと見たかったなあ・・・
[ 2008/04/27 08:20 ] 映画、映画音楽 | TB(0) | CM(0)

映画「赤い陣羽織」 

〔2008.03.15〕
大阪・九条のシネ・ヌーヴォで3月21日まで山本薩夫監督特集を上映中。14日夜に「赤い陣羽織」を見てきました。

参考→赤い陣羽織-goo 映画

奥方様に頭の上がらない代官は水車小屋の番人甚兵衛のおかかをものにしようと一計を案じ、甚兵衛を呼び出した隙に小屋に侵入するがおかかに撃退される。帰宅した甚兵衛は女房が代官に体を許したと誤解、代官のトレードマークの赤い陣羽織を着込んで代官のお屋敷に忍び込み奥方様の部屋へ。甚兵衛の野良着を着て屋敷に戻った代官は部下に本人だと認めてもらえず捕縛され・・・

山本監督といえば社会派、硬いイメージがありますが、先に挙げた山本薩夫特集のリンク先にもあるように<あらゆるジャンルで観客を魅了してきたしてきたエンタテインメント監督でもあった>。この「赤い陣羽織」、予想以上に面白かったです。最初の水車小屋に代官が訪れたシーン、おかか(有馬稲子色っぽい、かわい〜)が階上に隠れた甚兵衛の方をちらちら気にしながら代官をあしらう場面からなかなかの楽しさ。大木正夫のテーマ音楽が妙にヒステリック(半音階で下降する弦のピチカート)でコメディーにそぐわない感じがしたのですが、甚兵衛が奥方様に呼ばれて代官として登場するシーンでこれが流れるとすごく効果的だった! 

観客わずか約15人(>_<)もったいない。「赤い陣羽織」は15、18、20日に上映があるので興味のある人は見に行ってください。

ところで私が映画「赤い陣羽織」を見ようと思ったのは、4月15日大阪・いずみホールでのコンサート「大栗 裕の世界」で大栗の傑作オペラ、歌劇「赤い陣羽織」が演奏されるのを聞きに行くつもりなのでその予習も兼ねてだったのです。オペラ嫌いの私がほとんど唯一CDで聞いて面白いと感じたオペラ、「赤い陣羽織」の実演に接する機会がやってきました。楽しみです。

参考→4月15日は大栗裕三昧ヽ(^o^)丿 オペラ「赤い陣羽織」と管弦楽曲2曲!いずみホールの大阪フィル演奏会
[ 2008/03/15 01:16 ] 映画、映画音楽 | TB(0) | CM(0)

成瀬巳喜男「めし」 

〔2007.07.22〕
この間借りてきた成瀬巳喜男監督作品「めし」。

妻の原節子が東京の実家に帰り、大阪の自宅に取り残された夫(上原謙)を妻の同窓生が訪ねてくる場面。男一人で散らかり放題の家であわてて布団を片付けたり、畳の上に放置してあるビール瓶につまづいたり・・・という、コメディーでありがちなシチュエーションをこれほど見事に表現するものかと関心。

上のシーンで猫に驚いた女が上原謙に抱きつく場面など、女性陣の別に何ということもないようなしぐさが妙にエロい。手土産を踏んづけた上原謙の足の演技に笑った。

実家で眠りこける原節子を見て母親の杉村春子が「眠いんだよ女は。主人を持つと気疲れだけでもね」。はいはいそうですか分かりました(女→男、主人→女房と入れ替えてくれよ)。

原節子の「ぎこちない笑い」は、あんまり好きじゃないなあ・・・

もちろん「極道の妻たち」ほどではないが、「変な大阪弁」は気になった。

本日の体重:70.0キロ。
[ 2007/07/22 19:59 ] 映画、映画音楽 | TB(1) | CM(0)

電送人間 

〔2007.07.15〕
「電送人間」(1960、東宝)DVD観ました。

こんな映画です→電送人間-goo映画

中丸忠雄の怪演がいい。新聞記者役の鶴田浩二は悪くはないですが・・・検索するとこういう役は全部佐原健二でいいと書いている人がいました。同感。

池野成の重厚なテーマ音楽、かっこいい。軍国キャバレー大本営のジャズ風軍艦マーチ面白い。この人の音楽は管楽器の使い方がユニーク。

池野成のCDがもうすぐ出ますね→池野成の音楽。買えるかなあ・・・

参考→猫姫じゃ オタクイーンの「恋するネヴュラ」


[ 2007/07/15 10:33 ] 映画、映画音楽 | TB(3) | CM(6)

永井荷風が書いた幻のシナリオ:ラヴェル「左手のためのピアノ協奏曲」創作エピソードを下敷きにした音楽映画とは? 

〔2007.05.29〕
最近当ブログで取り上げている秋山邦晴著「昭和の作曲家たち―太平洋戦争と音楽」(過去記事は→こちら) を読んでいて、「濹東綺譚」「つゆのあとさき」「ふらんす物語」などの名作を書いた小説家・永井荷風(1879〜1959)が書いた知られざる音楽映画のシナリオについての記述にぶつかりました。1938年に荷風は「浅草交響曲」と題するシナリオを書き(映画化はされていない)荷風全集にも収録されていますが、今回紹介するのは別のものです。

《――荷風さんは戦時中にもう一本シナリオを書いておられたようですね。荷風の昭和十八年十一月十日の日記に「音楽映画の腹案成れる」とありますね。
菅原 そうです。「左手の曲」というシナリオです。内容は、ラヴェルに〈左手のピアノ・コンチェルト〉がありますね、あれを宅孝二が荷風さんに弾いて聴かせた。それに非常に興味をもったのです。それによって、戦争で右手を失った軍人が、左手だけで曲を弾いて立ち直るという筋のシナリオを書いたのです。》

上記は荷風と親しかった作曲家・菅原明朗へのインタビューの中から引用したものです。宅孝二は当時の日本を代表するクラシックのピアニスト兼作曲家。〈左手のピアノ・コンチェルト〉は現在の一般的な表記では「左手のためのピアノ協奏曲」ですね。ラヴェルがこの曲を作曲することになった経緯を手元にあるCDラヴェル:ピアノ協奏曲(デュトワ指揮モントリオール響、ピアノ独奏パスカル・ロジェ)のライナーノートから引用します。

《この曲は、第一次大戦の戦傷で右手を失ってしまったオーストリアの名ピアニスト、パウル・ヴィットゲンシュタイン(1887−1961。有名な思想家ルードヴィヒ・ヴィットゲンシュタインの兄に当たる)の依頼により、1931年から翌1932年に作曲された。ヴィットゲンシュタインは、ラヴェルのほかにもプロコフィエフ(ピアノ協奏曲第4番)、ブリテン、R・シュトラウス、コルンゴールド、フロラン・シュミット等にも左手ピアノのための作品を依頼し、結果として音楽史の中に「左手ピアノ」という新しいジャンルを切り拓くことになった》

戦争に行って右手を失くしたピアニストが、左手のための曲を演奏することによって立ち直るという映画を構想した永井荷風。そのころの荷風の日記「断腸亭日乗」には「音楽映画の腹案成れり」という言葉とともに、ラヴェルの評伝と思われる仏語の原書を読んでいる旨の記述があります。また別の日にはドビュッシーに関する原書も読んでいます。シナリオ執筆のためにラヴェルと、同じ19世紀末から20世紀初めのフランスの作曲家ということでドビュッシーのことも勉強していたのでしょうか。しかし時局柄、結局この映画の撮影は実現しませんでした。

[ 2007/05/29 01:14 ] 映画、映画音楽 | TB(0) | CM(4)

黛敏郎、ジャズ、鍵盤打楽器:映画「女が階段を上がる時」「幕末太陽傳」 

〔2007.04.22〕
最近見た映画(DVDレンタル)

女が階段を上る時」(1960年、東宝)
監督:成瀬巳喜男 、音楽:黛敏郎
出演:高峰秀子、森雅之、加東大介、団令子, 仲代達矢

幕末太陽傳」(1957年、日活)
監督:川島雄三、音楽:黛敏郎
出演:フランキー堺、左幸子、南田洋子、石原裕次郎、小沢昭一

「女が階段を上がる時」:銀座のバーの雇われママに扮した高峰秀子、美しい! 色っぽい。映画の中では30歳という設定でしたが30でこんな大人の女いるか? まあ男もそうですが今の人間は幼稚です(もちろん自分も含む)。ママが惚れた銀行支店長の森雅之。男前、かっこいい、社会的地位ありだが煮え切らない、保身的、ずるい男・・・という役柄が似合う人ですね。

黛敏郎のジャズ調音楽。ビブラフォンとウッドベースのいらだたしげな響きが、華やかだが不安定な夜の女たちの境遇を示すのに効果を上げています。音を重ねたビブラフォンのうなりが黛の「涅槃交響曲」の梵鐘の響きに通じるものがあるような気がしました。

「幕末太陽傳」:このテンポのよさは尋常ではないです(特に中盤以降)。フランキーの動き、左幸子と南田洋子の乱闘シーンがすごい。映画の内容についてはサダナリデラックスさんのこちらのページで極めて詳細に紹介してありますので参考にしてください。

この映画も音楽は黛敏郎。やはりジャズっぽい曲、木琴の音が耳に残る部分が多いです。木琴、マリンバ、ビブラフォンなどの鍵盤打楽器を使うのが好きなのでしょうね。純音楽作品でも「BUGAKU」などで木琴系の音が印象的ですし、そういえば「木琴小協奏曲」という曲もありました。

フランキー堺が火薬を調合するシーンで流れるプリペアドピアノ(だと思う)と鼓、木琴などで奏される怪しい音楽が素敵です! 黛、センスいいなあ。
[ 2007/04/22 22:32 ] 映画、映画音楽 | TB(1) | CM(1)
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