伊福部昭音楽祭が終わりました。ちょっと虚脱状態です。大阪から夜行バスで2車中泊3日の強行軍、疲れましたが、十分に楽しんできました。
伊福部昭音楽祭(2007年3月4日、東京・サントリーホール)
第1部 伊福部昭とヴィルトゥオーゾ
「音楽の生まれる時」二十五絃箏甲乙奏合交響譚詩 筝:野坂惠子 小宮瑞代
アイヌの叙事詩に依る対話体牧歌 歌:藍川由美 ティンパニ:高田みどり
第2部 映画の世界
「映画人、伊福部昭を語る」 SF交響ファンタジー第1番 「銀嶺の果て」よりオープニングタイトル/スキーシーン「座頭市物語」よりオープニングタイトル(琵琶:首藤久美子)
「ビルマの竪琴」よりメインテーマ 「わんぱく王子の大蛇退治」より"アメノウズメの舞" オーケストラのための特撮大行進曲 ゲスト:富山省吾(映画プロデューサー)、高畑勲(アニメーション監督)
第3部 管絃楽の響
「大楽必易」 管絃楽のための「日本組曲」シンフォニア・タプカーラ (第2,第3部管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団、指揮:本名徹次)
午後2時ごろにサントリーホールに到着。開場前に行列している客はほとんどが男性です。普通のクラシックコンサートとは雰囲気が違います。
2時20分に開場、物販コーナーへ向かう。数量限定のポストカード&ポスター目当てだったのですが、群がる客の勢いに負けてどんどん売り場から遠ざかってしまいました。恐るべし伊福部
オタファン、バーゲンセールに群がる大阪のおばちゃんも顔負けです。
買い物はあきらめて伊福部昭の遺品や映画台本、楽譜などの展示コーナーへ。「フランケンシュタインの斗い」という題の台本には1966年の日付があり、赤で大きなバツ印と「revised」(改訂)という文字が書いてあります。おそらく同年作の東宝特撮映画「サンダ対ガイラ」の決定稿の前の段階、題名が正式に決まる前の台本なのでしょう。1ページ目に高低2面の箏の調弦が書かれた「二十五絃箏甲乙奏合交響譚詩」の自筆譜、弟子の作曲家・池野成が美しく清書したシンフォニア・タプカーラ初稿、改訂版のスコアもありました。貴重なものをいろいろ見ることができました。この後一通り買い物を終えたファンが展示コーナーに群がり、とてもゆっくり見ていられない状態になったので買い物できなかったのが却ってラッキーだったかもしれません。
午後3時。司会役の博覧強記の音楽評論家・片山杜秀氏がアシスタントの女性を伴ってステージに現れ、最初の出演者の野坂惠子、小宮瑞代を紹介します。祭りの始まりです。
オーケストラ曲の交響譚詩を二面の箏のために編曲した「二十五絃箏甲乙奏合交響譚詩」、実に面白い曲です。弦の数が普通の箏の倍近くある二十五絃箏の表現力の豊かさにびっくりしたお客さんも多かっただろうなと思います。
ただ野坂さんが演奏後に語ったとおり大変に難しい曲で、ところどころミスもありました。それに箏二面の音量がホール(約2000席)の広さに対して弱かったかなと。当ブログ
「二十絃箏とオーケストラのための交響的エグログ」(箏・野坂惠子)、
伊福部昭「二十絃箏とオーケストラのための交響的エグログ」(箏・野坂惠子)のつづき で書いた2004年11月の大阪・いずみホール(約800席)での演奏では音量に不満は感じなかったし演奏自体も大変な名演だったので、今回は個人的には残念な部分がありました。
野坂さんと司会者の話の間に箏が片付けられ、かわってティンパニがステージ上にセットされます。「アイヌの叙事詩に依る対話体牧歌」、伊福部作品を数多く歌ってきたソプラノ藍川由美と、世界的に活躍する打楽器奏者高田みどりのティンパニがガチンコ勝負を繰り広げます(→当ブログ
ティンパニと声の激突コラボ:伊福部昭の傑作歌曲「アイヌの叙事詩に依る対話体牧歌」参照)。
上で示した過去記事でも触れているのですが、藍川由美さんやってくれました。高田みどりさんと共にアイヌのコスプレで登場です。1曲目の「或る古老の唄った歌」から声の大きさ、深さに圧倒されました。しっかりと足を踏みしめて歌うその姿はどっしりとした安定感があります。腹の底から声が出ています。こちらの腹の底にも響いてきます。涙が出てきました。
2曲目「北の海に死ぬ鳥の歌」ではティンパニの演奏に注目していました。CDで聞く限り素手で叩いているのは分かります。ほかにどんなマレットを使っているのか興味がありましたが、結局最初から最後まで全くマレットを使わず、微妙なニュアンスの違いを見事に叩き分けていました。びっくりです。
最後の「阿姑子と山姥の踊り歌 」は最もテンポが速く、激しい曲です。ティンパニの強打に負けない藍川さんの歌唱はますます迫力を増してきます。初の藍川さんのライブ、打ちのめされました。
(この項続く)