新交響楽団第194回演奏会(2006年7月22日、東京・サントリーホール)
指揮:小松一彦
芥川也寸志:交響管絃楽のための音楽
伊福部 昭:管絃楽のための日本組曲
黛 敏郎:涅槃交響曲(男声合唱・栗友会)
私の怠慢でずいぶん遅くなりましたが、このコンサートのレポート最後の曲は、伊福部昭「管絃楽のための日本組曲」です。他の曲については過去記事
「涅槃交響曲」コンサートにいってきた(1) 「涅槃交響曲」コンサートにいってきた(2) 新交響楽団演奏会:芥川也寸志「交響管絃楽のための音楽(1) 新交響楽団演奏会:芥川也寸志「交響管絃楽のための音楽」(2)で書きました。
「管絃楽のための日本組曲」は1933年、伊福部が19歳の時に書いたピアノ独奏曲「ピアノ組曲」が元になっています。この曲を58年後の1991年にオーケストラ曲として自ら編曲したものです。曲の構成は、
第1曲:盆踊
第2曲:七夕
第3曲:演怜(ながし)
第4曲:倭武多(ねぶた)
となっています。
「ピアノ組曲」は、若き日の伊福部と友人の三浦淳史(後に音楽評論家となる)が文通していたジョージ・コープランドというピアニストに献呈するために書かれました。ソナタか組曲を書いて送る、と三浦が伊福部に無断でコープランドに手紙を出したことが作曲のきっかけとなったと伊福部は語っています。
CD「伊福部昭の芸術2 響ー伊福部昭 交響楽の世界」のライナーノートには、伊福部の言葉として『あちらで組曲というと、メヌエットやリゴードンなど、舞曲を並べるのが慣例な訳ですから、すると日本人が組曲を書く場合、盆踊りやねぶたやながしを並べればよいのだろうと思い、そういう構成にしました』と書かれています.
「芸術はその民族の特殊性を通過して共通の人間性に到達すべきもの」という信念を持つ伊福部です。「影響は受けても、真似はすまい」と語っていた人です。組曲という古典的な西欧クラシック音楽のスタイルに盆踊り等々…とは一見奇異に思われますが、伊福部にとっては十分な必然性があった訳です。
第1曲の「盆踊」では、冒頭「どーーんどーーんどんかかかっか」という(これでは理解できませんか?すみません)祭り太鼓のリズム(安田大サーカスのHIRO君が太鼓を叩く真似をしますよね。あれです)で始まります。西洋音楽でタブーとされる平行5度が第1,2曲でバンバン使われます。第3曲「演怜」は流しの芸人の茶目っ気たっぷりのメロディーと切ない嘆き節。青森のねぶたに題材を求めた第4曲は途中からどんどん熱く燃え上がり、祭りは最高潮に達し……日本テイスト満開です。
さて、この日の演奏です。
私が「管絃楽のための日本組曲」をライブで聞くのは2回目です。前に聞いたのは「アジアオーケストラウィーク2004」で開かれたこんな演奏会でした。
岩城宏之指揮 大阪フィルハーモニー交響楽団(2004年10月8日 ザ・シンフォニーホール)
伊福部昭:管絃楽のための日本組曲
武満徹:夢の時
徳山美奈子:大阪素描
シベリウス:交響曲第2番
実はこのコンサート、伊福部作品以外は非常にいい演奏ばかりでした。すばらしい徳山作品、アンコールの外山雄三「管弦楽のためのラプソディー」はかっこ良かったし、私の苦手な武満も初めていいなと思いました。
しかし「管絃楽のための日本組曲」はコンサート冒頭だったせいかオケの乗りが悪く、「盆踊」は妙にどんくさいし、最終曲の後半部分が異常にテンポが速くて何を演奏しているのか分からない(迫力だけはあった)という風に、少々不満が残る演奏でした。
岩城宏之が再び「管絃楽のための日本組曲」を演奏するということで、今度こそいい演奏を頼むぞ、と期待と不安が半々だったのですが……ご存知のとおり岩城氏は亡くなり、この新交響楽団演奏会は小松一彦が代役を務めることになりました。
前置きが長すぎましたか? ようやく曲の感想を書くところまでたどり着きました。
第1曲「盆踊」ですが、手元にあるこの曲のCDのうち、前出「伊福部昭の芸術2 響ー伊福部昭 交響楽の世界」(広上淳一指揮、日本フィルハーモニー交響楽団)では第1曲は5分1秒、「伊福部昭ー作曲家の個展」(井上道義指揮、新日本フィルハーモニー交響楽団)は4分3秒とかなりテンポが違います。
「盆踊」はなるべく遅いテンポで演奏して欲しいのですが、一方で広上盤のように遅いとややモッサリした感じにもなります。井上盤は軽快だがあっさりし過ぎかなと…この日の新響の演奏はやや早めで双方のいいとこ取りを狙ったように思われました。ずんずん進んで行くがじっくりした重みは失わない、迫力もあるいい演奏だったと思います。
はかなく消える「七夕」、哀愁とユーモアの「演怜」と続き、いよいよ最終曲「倭武多」です。曲の後半、大太鼓がガンガン、ガンガンと打ち鳴らされ、祭りが絶頂を迎えました。この曲をご存知の方なら分かると思いますが、「だん、だん、だだだだだん」ですよ!シビレるー。
それから出ました!必殺技「がーーっ」です。曲のクライマックスで各楽器に音程を気にせず最大音量で「雑音」を出させる、「ピアノと管絃楽のためのリトミカ・オスティナータ」などで聞くことができる伊福部の得意技です。小松の指揮はこの「がーーっ」をやや長めに演奏してくれたように聞こえました。これも嬉しかったですね。
曲が終わって指揮者がパート別に楽団員を紹介する時、打楽器奏者に対してひときわ大きな拍手が送られていたのが印象に残りました。
参考URL⇒⇒⇒
「管絃楽のための日本組曲」については「
プッチーケイイチの女にもてないCDレビュー」中の「
重低音で腰を抜かせ!伊福部昭の日本組曲を聴け!! 」に詳しく書いてあります。「1000人の力士が、どすこいどすこいと突進してくるような錯覚を覚えます」とは!うまいこと言いますよね。
山尾好奇堂さんの2004年11月21日エントリー「
ロシアのオケによる伊福部サウンド」に『「日本組曲」のドあたまって、安田大サーカスを思い出すよね。笑』とあります。