2007年4月25日 大阪・いずみホール
●第1部 明治の唱歌〜洋に学んでの出発
蛍の光(作詞者未詳、スコットランド民謡)/庭の千草(里見義・詞、アイルランド民謡)/故郷の空(大和田建樹・詞、スコットランド民謡)/さくら(作詞者未詳、近世筝曲)/夏は来ぬ(佐佐木信綱・詞、小山作之助・曲)
●第2部 世紀末に出現した天才〜滝廉太郎
ピアノ曲「メヌエット」ロ短調(滝廉太郎作曲)/花(武島羽衣・詞、滝廉太郎・曲)/荒城の月(土井晩翠・詞、滝廉太郎・曲)/箱根八里(鳥居忱・詞、滝廉太郎・曲)
●第3部 明治から大正へ〜文部省唱歌の隆盛
われは海の子(宮原晃一郎・詞、作曲者未詳)/冬の夜(文部省唱歌)/春の小川(高野辰之・詞、岡野貞一・曲)/早春賦(吉丸一昌・詞、中田章・曲)/朧月夜(高野辰之・詞、岡野貞一・曲)
●第4部 大正文化と童謡の始まり
金糸雀(かなりや)(西條八十・詞、成田為三・曲)/七つの子(野口雨情・詞、本居長世・曲)/どこかで春が(百田宗治・詞、草川信・曲)/子諸なる古城のほとり(島崎藤村・詞、弘田龍太郎・曲)/鉾をおさめて(時雨音羽・詞、中山晋平・曲)
●第5部 頂点・山田耕筰(1886−1965)
曼珠沙華(北原白秋・詞)/野薔薇(三木露風・詞)/からたちの花(ピアノ独奏版)/中国地方の子守歌(作詞者未詳)
●第6部 激動の昭和へ〜山田耕筰と競った人びと
かごかき(貴志康一・詞、曲)/椰子の実(島崎藤村・詞、大中寅二・曲)/さんさ時雨、澤内甚句、田植踊、鍋子長嶺、南部松坂節、牛追歌(信時潔:ピアノ曲「東北民謡集」から)/泉のほとり(深尾須磨子・詞、橋本国彦・曲)/お菓子と娘(西條八十・詞、橋本国彦・曲)/舞〜
六代目菊五郎の娘道成寺によせて(深尾須磨子・詞、橋本国彦・曲)
出演:小泉惠子(ソプラノ)/田中純(バリトン)/櫻井裕子/(メゾ・ソプラノ)/花岡千春(ピアノ)
企画・解説:礒山雅(いずみホール音楽ディレクター、国立音楽大学教授)
明治以後の日本の唱歌、童謡などの歌曲の歩みをたどる「日本のうた」シリーズの第1回です。今回は外国民謡に日本語の詞をつけた明治初期の唱歌から始まり、滝廉太郎、明治末期の文部省唱歌、大正時代の童謡運動、山田耕筰、そして戦前、戦中のポスト山田耕筰時代と、時代順に日本の懐かしいうたを紹介する楽しいコンサートでした(参考→
いずみホールのHP 日経ネット関西版)。
第1部ではソプラノの小泉さんが歌った「夏は来ぬ」が印象的でした。蛍の光などの外国の民謡、さくらといったシンプルな曲からいきなりレベルが上がった感じ。第2部の滝廉太郎のピアノ曲を聞けたのは貴重でした。古典的なメヌエットという形式での習作ながら、どこか日本的な音の使い方とユニークなリズム感が面白く早世が惜しまれる才能だったと改めて思いました。2人の女声による花の華やかさ、ピアノ伴奏なしでバリトン田中さんが歌った荒城の月、箱根八里もよかったです(箱根八里の迫力!)
3部以降では田中さんの歌唱による子諸なる古城のほとり、鉾をおさめて、かごかき、椰子の実がいい味を出していました。一方女性陣の歌はお上手なのですが、クラシックの歌い手が日本語のポピュラーな曲を歌うときにありがちな違和感を感じる場面がありましたね。小泉さん、櫻井さんとも日本の歌曲は得意としているということですが・・・
ところが女性2人による橋本国彦の「泉のほとり」、櫻井さんの「お菓子と娘」ではそういった違和感は全く感じませんでした。「泉のほとり」では♪水よ〜水よ〜きれいな水よ〜、という2人の声がくっきりと響きわたり、澄み切った美しい水をたたえた泉の情景をよく映し出していました。橋本の歌曲で最も有名な「お菓子と娘」、洗練の極みです。恐ろしくおしゃれな橋本マジックであります。
「舞」は前に当ブログで少しだけ紹介しました(→
こちら)が、六代目菊五郎の娘道成寺にヒントを得た深尾須磨子の詩に印象派ふうの前衛的な音楽を付けたものです(藍川由美さんHPの
こちらのページの下のほうにこの曲について説明があります)。ある時はささやくように、かと思えば見得を切るように声を張り上げ・・・語りと歌の融合、難曲だと思いますが、小泉さんの歌唱は大健闘でした。
明治から戦前までの歌曲の流れを振り返るというこの企画で、実力のわりに忘れられている橋本国彦(戦後「戦争協力者」の烙印を押され、作曲を教えていた東京音楽学校を追われた)が最後に3曲も歌われたのは非常にうれしいことでした。礒山さんグッジョブや! でも礒山さんトークは滑らかでしたが早口で聞き取りにくかったですよ。もっともホールの音響というかマイクの具合、PAのほうに若干問題ありだったかもしれませんが。
ところで・・・客の年齢層は非常に高かったです。年配の方が楽しめるコンサートだったわけですが、若い人が少なかったのは残念でした(とくに男)。コンサート終了後、最寄り駅のJR大阪城駅は近所の大阪城ホールからの帰りの女の子たちがいっぱいいました。ORANGE RANGEのコンサートだったようです・・・彼女たちも20〜30年したら童謡、唱歌のコンサートに来てくれるのかなあ?
この日本のうた、第2回は11月29日に「戦後から現在まで」と題して開かれます。
参考:
橋本国彦の歌曲を集めたCD→
舞〜橋本國彦歌曲集
大傑作! 橋本の交響曲第1番収録のCD→
橋本國彦:交響曲第1番